ブラレイコ

ブラっと訪れた人生の寄り道からの学びを、ゆるふわに綴る場所

「好日日記」が教えてくれた、季節の中で一瞬の今を生きるということ

朝起きて、窓を開ける。スーッと気持ちよの良い風が通り抜けた。普段のムシムシした空気とは一転した、心地の良い風。

「いい風だなあ」なんて、リビングでのんびり過ごしていたら、突然の雨。
サーサーッと細い線のように、雨が斜めに降り始めた。激しい降り方ではないからか、ぼーっと眺めてしまう。梅雨終わりには激しい雨が降るらしいけれど、今朝の雨は穏やかで気持ちがいい。

世間では4連休の2日目だが、わたしにとって今日が連休の初日。そんな1日の始まりを風と雨を感じて過ごせるのは贅沢なことだ。

昼前には雨も止み、遠くから蝉の声が聞こえる。
ミーンミーン…… いや、ウィーンウィーンか?

うまく言葉にはできないが、間違いなくこれは夏の音だ。

朝から一歩も外に出ていないのに、季節が感じられる幸せ。


当たり前のように移ろう季節へ意識を向けると、気づきや感謝が溢れてくる。

その素晴らしさに気づけたのは、森下典子さんのエッセイのおかげだ。

春になれば、至る所でで草が芽吹き、草木にいっせいに花が咲く。そんなこと、誰もが幼い頃から当たり前だと思って暮らしている。だけど、ある日、まぶしい若葉を見て、卒然として気づくのだ。私たちはものすごく不思議なことに囲まれて、それを不思議とも思わずに暮らしているのだということに……。 
(春の章 穀雨より)

こちらは、「好日日記」の表紙裏にかかれた抜粋文。

森下さんの言葉は、とても分かりやすく、丁寧で、風景が浮かぶ。スラスラ〜と読めて、頭ではなく心に届く。

「好日日記」には、週に一回のお茶の稽古を通して感じた、感情や日々の思いが綴られている。

冬からはじまり、春、夏、秋、そして最後また冬となり終わる。
二十四節気ごとに区切られているため、読みながら季節の移ろいを感じることができるのだ。


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今回は、わたしの心に残った美しい言葉をご紹介しようと思う。

 

アタリじゃなくても、みんなにちゃんと「福」が来る。

初釜の最後に行う「福引き」の話の中の一文。「松」「竹」「梅」と書かれたくじが当たりくじ。しかし、ハズレくじにも「福」の文字が書かれている、との事。茶道の武田先生の素敵なセンスを感じられるエピソード。そんな大人にわたしもなりたい。

 

「できるなら稽古しなくてもよろしい。できないから、稽古するんです」

武田先生のセリフ。今回の本の中でも、何回も登場する言葉。
こんな風に言ってくれる師の存在って大きいなあ、と思う。

 

「静けさの音ね……」

茶釜の湯の煮え立つ音「松風」を聴きながら、お稽古仲間である雪野さんがつぶやいた一言。
静けさに音を感じるなんて。この表現が、とても美しい。

 

「そういう時はね…… 真ん中を残すのよ」

食籠(じきろう)の中に、お饅頭が二つ。一つは真ん中、もう一つは隅っこ。
真ん中のお饅頭を取ろうとした時に、武田先生が発した言葉。
「真ん中が残れば、最後のお客様のところにお菓子が回った時、『残り物』って感じがしないでしょ」と続く。
……ごもっとも。そういう気遣いのできる大人にわたしもなりたい(2回目)

 

柳緑花紅(やなぎはみどり、はなはくれない)

春分の頃の「掛け軸」に書かれた文字だ。
「花は赤く咲けばいい、柳は緑に茂ればいい」
他の人と比べて自分らしさを否定するのではなく、自分らしくあれ。
変わらないものを、変えようとしなくていい、という勇気づけられるメッセージ。

 

本来無一物(ほんらい、むいちもつ)

立夏の頃の「掛け軸」に書かれた文字。
「万物は実体ではなく、空にすぎないのだから、執着すべき対象は何一つないということ」らしい。真意はよくわからないけれど、「この掛け軸を眺めていると、胸がスカッとし勇気が湧いてくる」という筆者の言葉にわたしも共感する。なんか、カッコいい。

 

今の私はもう、あの頃のように、ぐんぐんと目に見える成長をすることはない。けれど、見えないところで今も、内へ内へと熟しているのだ。

茶道の稽古を楽しみ、その幸せを感じている森下さんの言葉。
わたしは茶道を習っていないし、武田先生のような師匠もいない。けれど、終わりなき学びを楽しむ森下さんの姿勢が、40歳を目前にしたわたしの励みになる。

 

先今年無事芽出度千秋楽(まず、こんねん、ぶじ、めでたく、せんしゅうらく)

一年の締めくくりは、この「掛け軸」が恒例らしい。粋だ。
その後につづく森下さんの言葉が、また良い。
「この一年が、平穏であっても、嵐でも、人生がうまくいっても、いかなくても、まずは無事に千秋楽が迎えられた。そのことを喜びたい……」
その通りだなあ。わたしも、その心を忘れないようにしたい。

 

今回ご紹介する言葉は、以上だ。

本当は、もっともっと、心に残るものがたくさんあったけれど、挙げだしたらキリがない。
それに、また別のタイミングで読むと、また違う言葉が心に留まったりもする。

全てご紹介するのは無理だから、今の気分で選んだものだけにする。


今回ご紹介した言葉に、少しでも興味が湧いたら、ぜひあなたにも読んでもらいたいと思う。

好日日記―季節のように生きる

好日日記―季節のように生きる

  • 作者:森下 典子
  • 発売日: 2018/10/07
  • メディア: 単行本
 


ちなみに、こちらの「好日日記」は、「日日是好日」の続編だ。
映画化もされたので、ご存知の方もきっと多いと思う。

日日是好日」は、わたしの人生の教科書といっても過言ではない、とても影響を受けた本の一つ。(以前、まとめたブログ記事がこちら)

reicoouchi.hatenablog.com


わたしは、人生の途中途中で、森下さんの言葉に出会い、人生を豊かにしていただいているのだなあと感じる。本当に有り難い。

もし、いつかお会いできることがあったら、しっかりとお礼をお伝えしたいものだ。
なんて、妄想したりして。

 

 

読んでいただき、ありがとうございました ☺︎