言葉に纏わるプロダクトの魅力
しばらくぶりの更新。
今回は、ここ数年注目している、日本の言葉に纏わるプロダクトについて書き留めておきたい。
言葉の持つ力を考える
万葉集には、つぎのような歌がある。
「この日本の国は 言霊の助ける国なのだ。だから無事であっておくれ。」といった意味。(海路の旅に出る人へ餞(はなむけ)した歌)
「言葉には力がある」と信じているからこそ、「無事であっておくれ」とあえて口に発することで幸いが起こることを期待する、そんな想いが表れている歌。
当時も、ポジティブな言葉がもたらす力を感じていたのだろう。
そう言えば、ポジティブな言葉の力に関して、心に残っている一節がある。
わたしは「できない」「無理」などのネガティブな言葉は発しない。なぜなら、言葉を発したら、自分の耳を通って、自分自身に返ってくるからだ。
ネガティブなことばかり考えて、発信していくと、自分自身がネガティブに染まっていってしまう。だから、ポジティブに物事を捉えて、言葉にする。
10年ほど前に、孫 正義 氏が、新卒入社社員へ贈った言葉。
「孫さんレベルでも、言葉のチョイスを気にするんだなあ〜」と驚いたし、「自分の発する言葉を最初に聞くのは自分」というフレーズがとても印象的で。いまなお覚えているし、わたし自身も意識するようになった一節だ。
いわゆるポジティブシンキングの話なのかもしれないが、それを実践する最初の一歩は、自分が発する前向きな言葉なのかもしれない。
きっと、わたしたちは「言葉の持つ力」をどこかで感じていて、信じている。
だからこそ、わたしは、日常のなかで「言葉」とどのように関わっていくのかを意識したいのだ。
心に留めておきたい言葉を身にまとう
1年前、素敵なコンセプトのアクセサリーと出逢った。
デザイナー國廣 沙織さんが手掛ける、ひらがなをモチーフにしたアクセサリーだ。
ひらがなは、万葉の時代から受け継がれている日本特有の文字文化。
ひらがなの曲線は、独創的で美しく、書のデザインだけでも十分にアートなのに。それが、アクセサリーと化して身につけられ、しかも好きな言葉をセレクトできるという……!
この魅力は、大きく2点だ。
まず、根底に書家としての日本文化への敬意と伝承、言葉の持つ意味の理解がしっかりとあるという点。
これだけだと少し小難しい印象となるのだが、アクセサリーという形にすることで、うまく日常と接続され身近に感じられるという点。
この2点が組み合わされた発想とバランスが、たまらなく良い!
すっかり國廣さんのファンとなり、ひらがなアクセサリーをほぼ毎日身につけて、言葉の意味を心に刻みながら生活をしている。
▲「こころ」ネックレスと「ありがとう」ピアス。ネックレスは、文字のデザイン性も素敵。「心に正直に毎日在りたい」という自分への想いを込めてつけてる。
ピアスは、誰かにありがとうを伝えたい想いが強い日に、身につけるようにしている。
パッと見ただけでは、ひらがなかどうか分からないことも多く、「これは何の形?」「これって文字?」と質問されることも多々。アクセサリーのコンセプトを含めて紹介すると、皆さんからお褒めの言葉をいただくことが多い。
▲こちらは「あいしてる」指輪。
自分では買いたくないけど、欲しいもの。笑
アクセサリーは、オーダーもできるため、自分自身やたいせつな人の名前で作るのも素敵だなあと思う。
2月前半には、歌舞伎座の地下での催事販売があるとのこと。また、新しい言葉のアクセサリーを手に入れるべく、國廣さんに会いに行こうと決めている。
たいせつな人に伝えたい言葉の想い
たいせつな人の人生の節目に、どのような言葉を添えようか。たいせつ故に、想いが溢れ、言葉に詰まってしまうこともある。
昨年、親しい後輩が結婚をすることになった。台湾出身で、就職と同時に日本に来た彼女だが、日本人男性と結婚することになった。
頑張り屋さんで、優しくて、繊細な心を持つ彼女に、どのような言葉を贈ろうかと考えていたところ、この言葉に出逢った。
「恵風(けいふう)」
万物を成長させる恵みの風。
生きとし生けるものを育んでいく力強い風です。
大切な方のよき未来をお祈りして。
まさに、わたしが彼女に伝えたい想いがギュッと詰まっているような言葉。
この言葉をわたしに教えてくれたのは、SIONEが手掛ける「読む器」シリーズだった。
しかも、単純なプロダクトではなく、たいそう凝っているのだ。
BOOK型のパッケージを開くと、左ページにはモノガタリが、右ページにはモノガタリが宿ったうつわがセットされています。
また、それぞれのモノガタリに合わせた音楽が付いておりQRコードよりアクセスし、お聞き頂く楽しみも一緒になった商品です。
言葉から成るモノガタリと、それをイメージして創られた器と、更に音楽とがひとつになったプロダクト。
贈り主の気持ちを、目で手で耳で感じることができるなんて、とっても面白いこと試みである。
今回セレクトした「恵風」以外にも、「亀甲」「蓮根」「しなとの風」など素敵な言葉をテーマとした器がたくさん!
たいせつな人への言葉の贈り方として、ぜひチェックしておきたい。
言葉に纏わるプロダクトに心奪われて
自分自身にも、たいせつな人に対しても、湧き上がる感情があり、それを表現するためには言葉が必要不可欠である。
スピーチ、手紙、メール、LINEなど、伝える方法はたくさんあるのだろうけれど、それを「形」として残すというやり方が、どうやらわたしは好きらしい。
なぜなら、前向きな言葉を身につけたり、日頃から触れていることが、きっと幸いをもたらすのだと、信じているから。
今回紹介したネックレスも器も、そんな「言葉の力」への想いを叶えてくれる素敵な存在たちなのだ。
今年も、たいせつな人たちにたくさんの幸が訪れるよう、たくさんの幸ある言葉をのせたプロダクトを贈りたいと思う。
楽しみはつづく☺︎