ビジネスマナーの真髄を求めつづけたら、「武士の礼法」にたどり着いた
「ビジネスマナーって必要ですか?」
入社間もない1年目社員から質問を受け、
ビジネスマナーに対する自分の思いを、はじめて言葉にした。
わたしは、 "型" を覚えればOKみたいなビジネスマナーは、本質的でないので必要じゃないと思ってる。
繰り返し練習するだけ、暗記するだけってのは、何かちょっと違う気がするので。
でも、社会人は、相手と自分の立場を俯瞰的に理解して、何を優先するべきかを自分の頭で考えて、行動を取らなければいけない。
だから、ビジネスマナーの ”物事の捉え方・考え方” を理解して、"表現する手法" を知っておくことはとても大切なことだと思う。
仕事をするうえで、「礼にはじまり、礼に終わる」という言葉をマイルールとしている。
なぜかと言うと、焦ったり・追い詰められると、ついつい自分本位な態度を取ってしまう癖があるからだ。
かつての上司から「仕事が雑」とお叱りを受けたあの日以降、このマイルールは常に意識するようにしている。
相手を尊重し、丁寧に向き合う。
それが、自分も相手も気持ちよく仕事ができる秘訣のように思うから。
「礼」のはじまりは、「武道」にある?
この「礼にはじまり、礼に終わる」という言葉、日本の「武道」が由来だそうだ。
たしかに、日本の武士って礼儀正しいイメージがあるけど、何故だろう?
調べて見ると、興味深いことがわかった。
遡ること室町時代(1335年)、武家には、武家専用の「礼法」と言う、ビジネスマナーのような考え方が存在していた。『修身論』『体用論』と言う2つの書物に、考え方・立ち居振る舞い・慣習が体系的にまとめられているらしい。
なんだか、とっても歴史がある。
武士というのは、「強ければ良し」という訳にもいかない。
弓術・剣術などの武術だけでなく、茶道・華道・香道・能楽・雅楽などの様々な文化を多岐に学び、教養を身につけ、人としての「道」を見出していくことを求められた。
つまり、武士には、「強さ」だけではなく総合的な「人間力」が必要とされた。
なんて、大変な職業なんだ。
尋常の 射手とは常の 心にて なづむ暇なく 習いお云はなむ
こちらは、800年以上続く 旧武家 小笠原家に伝わる教えの歌。
上達を望むのであれば、ひと時の暇もなく、常に怠ることなく、稽古に励めと言っています。
向上には「常」ということが肝要です。
なるほどなあ。
武士は、稽古で武術を習得することはもちろん、その稽古の根底にある「礼法」を学んでいたらしい。礼法なくして、「道」を歩むことはできない、ということ。
知れば知るほど、納得する「武家の礼法」の考え方
今回、この旧武家 小笠原家の次期宗家である 小笠原清基 さんが、「礼法」について分かりやすく纏めている書籍「形姿(なりかたち)」と出会うことができた。
このなかで紹介されている「武家の礼法」の考え方の一部を紹介したいと思う。
立ち居振る舞いに無駄がなく、効率的で、あらゆる場面で実際に役立つものがあるとき、それを見る人に自然な動きとして受け止められます。(中略) 実用の合理・無駄の省略・調和の美「実用・省略・美」が一体となったとき、初めて美しい動作となって人の目に映るのです。
意外や意外。武士の考え方って、とっても合理的。
身体の筋肉や構造、扱う物の機能などを十分に理解したうえで、礼儀作法の形としていくものらしい。
行動のもととなる考え方を身につけるには、次の四つのことが必要です。
一. 正しい姿勢の自覚
一. 筋肉の動きに反しない
一. 物の機能を大切にする
一. 環境や相手に対する位置を常に考える
四点を稽古のなかで学び、先ほどの「実用・省略・美」 に繋げていく。
それが、応用の効く「考え方」を身につけるということなのだ。
ただ形式を押し付けるだけでは礼の意味がありません。なぜそうするのか、なぜそうなるのか、この二つが礼に取って大切なのです。
(中略)動作のさまざまな約束事が整備されるにしたがい、作法が生まれてきます。この作法は、生活の変化や時代、文化により、変遷していきます。
やはり、根幹にはこのような考え方がある。
礼法は、芯の考え方はそのままに、作法(形)を時代時代に適合しながら受け継がれていく。現代のビジネスマナーを学ぶにあたっても、全く同じことが言えるなあと、納得。
ビジネスマナーって、特別なものじゃない
ビジネスマナーって、昭和時代から受け継いできたような印象だったけれど。
源流を辿れば、古来の日本人が大切にしてきた「礼法」の考え方に繋がっているように思う。
かつては、寺子屋や日々の稽古を通して学べた「礼法」も、現代は剣道・柔道・茶道・華道などを習っていない限り触れることって殆どない。
社会人になって、マナーとして「型」だけを教えられたとしても、その真髄って絶対に伝わらないよねぇ。
本のなかには、次のようなことが書かれていた。
礼儀作法の実践により、心と体は一つにまとまり、風格となって現れます。妬まず、誇らず、奢らず、非礼を行わず、立居振舞の堂々とした人は、他社から攻撃を受けにくいのです。
現代のビジネスマナーにおいても、相手を尊重し、大切に思っている「心」というのは行動に現れる。マニュアル通りの「型」なのか、本当に思いを持っているのかって不思議と伝わってくるものだ。
礼法のような、人としてのあり方を教えてくれる考え方が、現代の日常の中で引き継がれにくくなっていることは、寂しいことだし、日本人の心を失ってしまうように思う。
もちろん、現代のビジネスパーソンは、武士ではないので、武家の礼儀作法がそのまんまは当てはまらないけど、受け継いでいくべき大切な考え方は多々あるなあ。
そう思うと、礼法を学んでいない我々にとって、社会人の「ビジネスマナー研修」というはとても大切な機会であり、そこで「礼法」の心得に触れることができたなら、日本人としての心を受け継ぐことができるのかも知れない。
そんな、大そうなことを考えてしまった。
新入社員研修に、日本人として受け継ぎたい礼法の心を盛り込む。
そんな意気込みで、来年の春を迎えてみたいなあ。
まずは、自分にできそうなことを考えてみるとしよう。
おわり
最後まで読んでくださり、ありがとうございました☺︎