未知へのトキメキを取り戻したい大人たちへ捧ぐ、魔法の言葉
東京より、宇宙の方が近い。
子供の頃、本気でそう思っていた。
私の育った街には、H-Ⅱという純国産ロケットの実物大模型がそびえ立っていてた。
通学路をショートカットする時は、JAXA(あの頃はNASDAって名前だったけど)の敷地を通り抜けしてた。自転車でふらっと入ることができて、広大な敷地には緑がいっぱいで気持ちよかったのを覚えてる。
同じ小学校には、宇宙飛行士の毛利衛さんの息子さんが通っていた。そのご縁で、毛利さんのお話し会にも参加したりして。みんなも、私も、宇宙飛行士になりたい!って本気で思ってたんだよなあ。
当時、街には電車が走っておらず、東京までは、高速バスで90分くらい。すぐに行ける場所ではなかった東京。
子供の頃の私には、日常で感じている宇宙の方が断然身近だったのだ。
大人になって、東京で暮らし出した私は、宇宙を身近に感じる機会がほとんどなくなった。
未知の宇宙を想像してワクワクするようなトキメキを取り戻したいとき、私はこれらの文章を読む。
すると、子供のころ無邪気に感じていた宇宙が戻ってくるんだ。
これらは、私にとって特別な文章たち。無邪気を取り戻すための魔法の言葉たち。
コラム・宇宙って広すぎ!
物理学のWebサイトを運営している広江克彦さんのブログにある一説。
大好きなコラムで、何度も何度も何度も読んで、主要部分は暗記までした。
宇宙に興味を持った子供たちに伝えたい内容。
ドキドキワクワクする文章が、たまらなく素敵なコラムだ。
出だしが、天才的。一瞬でひきこまれちゃう。
ちょっと聞いてー。 宇宙ってどれくらい広いか、長い間、考えないで来たんだ。
地球が直径 1 cm の玉だとする。そうすると地球の一周の長さは 3.14 cm だ。 光は 1 秒で地球を 7回り半 するってのは有名で、3.14 に 7.5を掛けて 23.5 cm だ。光は 1 秒で 23.5 cm 進むって事だ。月までは光でも 1.3 秒かかるのだから、30.6 cm だ。
月まで約 30 cm。机の上に絵を書いてみると分かり易いと思う。 月の直径は地球の1/4くらい。1 cm の地球の周りを 2.5 mm の月が、30 cm 離れて円を描いて回っている。
こんな調子て、机の上に宇宙が広がっていくのだ。
地球と月の関係が分かったところで、壁にぶつかる。
そう、太陽が思ったよりも大きすぎて、到底机には収まらなくなる。
太陽の大きさは、地球を 109 個並べたくらいなんだって。今のスケールで言えば、太陽は 1.1 メートルくらいのガスで出来たボールってことだ。
それがどれくらい離れたところにあるんだろう。
太陽の大きさが、地球 100 個くらい並ぶ大きさだってことは、 代わりに月を並べたら、 月は地球の 4 分の 1 くらいの大きさなんだから、400 個くらい並べないといけない。 太陽は月の 400 倍も大きいってこと。
それが地球から見て、日食でちょうど重なるくらいの大きさに見えるってことは、 400倍離れてるってことなんだ。
400 * 30.6 cm = 12240 cm。えーっと、それは 122メートル?!
遠いって事は分かるけど、もう実感できない。
行き詰まった結果、太陽を1cmの大きさとして、再度地球と月を書き直すことに。
太陽が1cmになると、地球は0.1mmになり、その距離は1.2mになる。
そんなに離れてても、ちゃんと引き合ってるんだ。ふっと息を吹いたら、それだけでどこかへ飛んで行ってしまいそう。
こんな粉みたいな地球なのに、 太陽との間にはこれ以上に大きな粉は他に何も無いっていうんだ。 大きな物体としては水星と金星があるけど、こいつらだって地球よりは少し小さいくらい。
宇宙って、間にはなーんにもない!
図鑑に載ってるような、太陽系の惑星が勢揃いで並んでるイラストなんて嘘っぱちだってこと。
宇宙の広がりを、目の前でイメージが出来てしまう。
このコラム、すごいでしょう?
続きは、実際のコラムページで、ぜひ読み進めてほしい。
二十億光年の孤独
言わずもがな、谷川俊太郎さんの超有名な詩だ。
谷川さんの言葉は、とてもピュアで、信念があって、ファンタジーに溢れていて大好きだ。
(以前、その想いをこちらのブログに纏めています)
この詩を、一度は目にしたことがある方も多いだろう。
ネリリ、キルル、ハララの響きを覚えている方も多いだろう。
人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
この詩を読むと、私が宇宙人を考えているのと同じように
今ちょうど、広い宇宙にいる誰かが、私のことを思っているような妄想が広がる。
「万有引力とは、ひきあう孤独の力である」
生き物はきっと、寂しがり屋なんだ。宇宙人だって、みんなおんなじで。
そう思うと、孤独の仲間がいる感覚が、とても心地よかったりする。(相手は妄想の宇宙人なのにね)
久しぶりに、ぜひ、全文を読んでみて!
生物の授業で地球史の概観を教えるとき
今気づいたが、この話は、宇宙ではなく、地球史だった。(汗)
でも、何かワクワクする文章だから、ぜひ紹介したい。
「あなたの体は9割が細菌」という著書の中で登場する文章で、本の主題とは直接的には関係がないのだけど、私はここの文章が大好きすぎて、何度も読み返している。
生物の授業で地球史の概観を教えるとき、両腕を広げて説明してくれる先生がいる。
右手の中指の先端が四六億年前の地球誕生。左手の先端が現在。
地球の溶岩が冷え固まって、細菌という形の生き物が誕生するのは右のひじ。
それから三十億年ほどかけて、単純な動物が生まれるのは左の手首。
体毛を持つ哺乳類が登場するのは左の中指のつけ根。
ヒトが現れるのは中指の爪の先のさきだ。やすりで中指の爪を一回こすっただけで、ヒトの歴史はあとかたなく消えてしまう。
こんな説明、聞いたことない!
初めて読んだときは、とにかく衝撃だった。
めちゃくちゃわかりやすくありません?
地球の誕生に比べたら、いかに人類の歴史が浅いことか。
それを、自分の体を使って 表現するなんて、ナイスすぎる表現力。最高だよ、先生。
歳を重ねると、未知のものに出会ったときのトキメキを忘れてしまう時がある。
知識ばかり増えて、頭でっかちになって、妄想する機会が減って、気がついたらつまらない大人になってたりする。
そんな時こそ、今回ご紹介した文章を読み返して、子供の頃に感じたピュアで無邪気なトキメキを取り戻す。
この3つの文章は、私にとって魔法の言葉だ。
いつまでも、妄想炸裂してトキメキを忘れない大人でありたいぞ♡
人生の楽しみは、つづく。