「日日是好日」から学んだ、生き方のヒント
本は、時に、人生にとって とてもたいせつな事を教えてくれる。
この、森下典子さんの「日日是好日」は、生き方のヒントを教えてくれた特別な一冊だ。
日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)
- 作者: 森下典子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/10/28
- メディア: 文庫
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数年前、どこを目指せばいいのかがわからず不安と焦りいっぱいのわたしに、斜に構えずに空っぽになって良いのだと、優しく教えてくれた。
この夏、「日日是好日」が映画化されることが決まったとニュースで聞いた。この本の世界観を映像で見ることができるなんて!と、ワクワクが止まらなかった。
そして先日、映画に出演される樹木希林さんが亡くなったニュースを聞き、悲しみが止まらない。本に登場するお茶の武田先生と、樹木希林さんのイメージは、本当にマッチする。
どちらも「生きる」ことを全うしているカッコいい大人な女性だ。
そんな人生の先輩たちは、自身の生き様と少しの言葉を紡ぐことで、わたしたちに「生き方」のヒントを与えてくれる。
わたしたちは、そのヒントを自分なりに解釈して、毎日を繰り返す。
日日是好日が教えてくれた「生きる」ヒント
今日、久しぶりに「日日是好日」を読み返した。
主人公の典子と自分が重なったり、典子の成長からも刺激を受けたり。
今読んでも、教えられることがたくさんある。
ああ、やっぱりこの本は、自分にとって特別な一冊なのだと気づかされる。今日の自分に響いた言葉を、記録しておく。
・学ぶこと
この本の「まえがき」は、たまらなく良い。わたしの好きな一節から、「学ぶ」とはなんなのか、を考える。
世の中には、「すぐわかるもの」と、「すぐわからないもの」の二種類がある。
すぐわかるものは、一度通り過ぎればそれでいい。けれど、すぐにわからないものは、フェリーニの『道』のように、何度か行ったり来たりするうちに、後になって少しずつじわじわとわかりだし、「別もの」に変わっていく。そして、わかるたびに、自分が見ていたのは、全体の中のほんの断片にすぎなかったとに気づく。
「お茶」ってそういうものなのだ。
検索したらすぐに答えが出るものもあるけれど、自分の中から時間をかけて答えを見出すものもあるのだ。
ものを習うと言うことは、相手の前に、何を知らない「ゼロ」の自分を開くことなのだ。それなのに、私はなんて邪魔なものを持ってここにいるのだろう。心のどこかで、「こんなこと簡単よ」「私はデキるわ」と斜に構えていた。私はなんて慢心していたんだろう。
すぐに答えを知りたがる時代に生きているから、知らないことがダメなことと思いがちだけど、そんなことは無い。
「自分は何も知らないんだ」に気づいてからが、学びの始まりだったりする。
お茶は、季節のサイクルに沿った日本人の暮らしと美学と哲学を、自分の体に体験させながら知ることだった。
本当に知るには、時間がかかる。けれど、「あっ、そうか!」とわかった瞬間、それは、私の血や肉になった。
もし、初めから先生が全部説明してくれたら、私は、長いプロセスの末に、ある日、自分の答えを手にすることはなかった。先生は「余白」を残してくれたのだ……。
学びとは、理解度やスピードを競うものでも無いし、正解の形が一つであるとも限らない。他人と比べるものでもないのだ。
学びとは、「きのうまでの自分」と比べて少しずつ成長していくことなのだ。
個性を重んじる学校教育の中に、人を競争に追い立てる制約と不自由があり、厳格な約束事に縛られた窮屈な茶道の中に、個人のあるがままを受け入れる大きな自由がある……。
一体、本物の自由とはなんだろう。
この世には、学校教育とは全く違った形の学びがある。
わたしたちは、それに気づき、他人と比べることから脱して、自分の人生を生きはじめるのかもしれない。
・生きること
頭で考えても、辿り着けないこともある。人から説明を受けても、腹の底から理解ができないこともある。
でも、目の前にことに、心を込めて丁寧に向き合っていれば、ある時変化は訪れる。
すると、ある日突然、雨が生ぬるく匂い始めた。「あ、夕立が来る」と、思った。
庭木を叩く雨粒が、今までとはちがう音に聞こえた。その直後、あたりにムウッと土の匂いがたちこめた。
(中略)季節が、「匂い」や「音」という五感にうったえ始めた。自分は、生まれた水辺の匂いを嗅ぎ分ける一匹のカエルのような季節の生き物なのだということを思い出した。
どしゃぶりの日だった。雨の音にひたすら聴き入っていると、突然、部屋が消えるような気がした。私はどしゃぶりの中にいた。雨を聴くうちに、やがて私が雨そのものになって、先生の家の庭木に降っていた。
(「生きてる」って、こういうことだったのか!)
お茶を通じて、少しずつ変化が起きて、毎日が全くの別の世界に見えてくる。
「雨の日は、雨を聴きなさい。心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、今を一心に味わいなさい。そうすればわかるはずだ。自由になる道は、いつでも今ここにある」
今を一心に味わうって、実は難しい。
過去や未来を思う限り、安心して生きることはできない。道は一つしかない。今を味わうことだ。過去も未来もなく、ただこの一瞬に没頭できた時、人間は自分がさえぎるもののない自由の中で生きていることに気づくのだ……。
わたしの頭の中は、いつだって妄想だらけ。
過去に行っては後悔し、未来に行っては不安になる。過去も未来もどうすることもできないことは、分かっているのに。。。
難しいなあ。
長い目で、今を生きるということ
この本では、茶道を通して、生きることを教えてくれた。
難しくても、意味がすぐに分からなくても、目の前のことに心を込めて、丁寧に積み重ねていけば、いつか分かるときが来るのだと。
生きにくい時代を生きる時、真っ暗闇の中で自信を失った時、お茶は教えてくれる。「長い目で、今を生きろ」と。
著者の典子さんは、たまたま武田先生の茶道からそれを学んだけれど、
別の誰かは、マインドフルネスとか、哲学とか、宗教とか、あるいは人生の何かしらの出来事を通じて、同じような気づきがあるのだと思う。
わたしは、たまたまこの本を手にとり、そのことを教えられた。
わたしたちは、どんな日だって楽しむことができる。
そのことに気づく絶好のチャンスが、人生にはたくさん散らばっているのだ。
そんなたいせつなことを教えてくれた本「日日是好日」に心から感謝します。
映画の公開は、10/13(土)から。
たぶん、映画を見ながら、ものすごく泣いてしまうだろうな。
でも、それって、なんの涙なんだろ。その感情も、じっくり味わってみよう。
楽しみはつづく☺︎