ブラレイコ

ブラっと訪れた人生の寄り道からの学びを、ゆるふわに綴る場所

良本「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」でおもてなしマインドを考える

ようやく「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読んだ。今年読んだ本の中でも、ベスト3に入る傑作本だった。

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話題になっていたし、さまざまな賞も受賞していたし、面白いのだろうなとは思っていたけれど、手にとって大正解!

というか、こういった本がヒットする世の中であることが嬉しい、と感じる程の本。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

 

 取り扱っているテーマとしては、「多様性理解」なのだが、リアルな子供の目線で、押し付けがましくなく、大切な軸を伝えてくれるのが心地よい。

主人公は、英国ブライトンに住む中学生。父親が英国人で母親が日本人。彼の通う中学校は、人種も貧困もごちゃ混ぜな「元・底辺中学校」。クラスメイトには、人種差別する人も、貧困でボロボロの制服を着た人も、ジェンダーに悩む人もさまざま。

日々色んなトラブルが起きるが、彼は逃げずに向き合い、受け止めていく、というノンフィクションストーリー。

※こちらにあらすじアリ。

www.shinchosha.co.jp

作者は、彼の母親 ブレディみかこ さん。差別・偏見というデリケートな問題を、母と息子が逃げずに語り合うという親子関係も、また、素敵だなあと思う。

 

来年2020年は、オリンピック・パラリンピックイヤーだ。来年の来日外国人は約4000万人近いと言われている。

島国日本で生まれ育った私には見たことも触れたこともない、さまざまな価値観が mush up されるに違いない。

世界の方々を迎え入れる1人として、この「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」から学ぶことは多分にある。

特に、印象的だったフレーズを綴っておきたい。

 

多様性はめんどくさいけど、無知を減らす良いもの

息子「どうして多様性があるとややこしくなるの」

母「多様性ってやつは物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」

息子「楽じゃないものが、どうしていいの?」

母「楽ばっかりしてると、無知になるから。

多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」

多様性に向き合うには、「多様性はいいものだ」というブレない信念が根底に備わっていることがとても重要なんだ。

 

アイデンティティは1つじゃない

校長「僕は、イングレッシュで、ブリティッシュで、ヨーロピアンです。複数のアイデンティティを持っています。どれか一つということではない」(中略)

 

どれか一つを選べとか、そのうちのどれを名乗ったかでやたら揉めたりする世の中になってきたのは確かである。(中略)分断とは、そのどれか一つを他者の身にまとわせ、自分の方が上にいるのだと思えるアイデンティティを選んで身にまとうときに起こるものなのかもしれない、と思った。

アイデンティティは1つではない。当たり前なのに。なぜ人は一側面だけにフォーカスをして、マイノリティを作りマウンティングしたがるのだろう。

 

これからはエンパシーの時代

息子「EU離脱や、テロリズムの問題や、世界中で起きているいろんな混乱を僕らが乗り越えていくには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみることが大事なんだって。つまり、他人の靴を履いてみること。これからは『エンパシーの時代』(中略)」

(中略)エンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が、何を考えているだろうと想像する力のことだ。シンパシーの感情的状態に対し、エンパシーは知的作業とも言えるかもしれない。

英語には、こんな表現があるらしい。"put yourself in their shoes (他人の靴を履いてみる=他人の立場に立ってみる)" 

これまでもエンパシーの時代だという言葉はよく耳にしていたけど、ただの感情的共感とは異なる「知的作業」という表現にようやく腹落ち出来た。

 

マルチカルチュラルはいつも手探り

久しぶりに思い切り地雷を踏んでしまった。この国には様々な人々が住み、様々な考え方や文化や考え方を持ち、様々な怒りの表出法をすると長年学んできたはずでも、やっぱり踏んでしまう。(中略)そして、それはわたしの心にも激しく波打っていた。マルチカルチュラルな社会で生きることは、ときとしてクラゲがぷかぷか浮いている海を泳ぐことに似ている。

ダイバーシティな環境で生きていると言っても、100%理解できる状態なんてある訳はなくて、意図していないときに、誰かの地雷を踏んでしまう事ってあるんだな。その繰り返しなんだ、というリアルを教えられたきがする。

 

いずれも深く、自分の心に残る言葉だった。

「世の中の風潮に乗って、表面的に語っている多様性」みたいな流行のノリ、とは大違いのリアルがここにある。

ニュースや教科書で教わる問題よりも、隣の友達の問題として捉えられる方が、得られるものって多いなあ、と改めて思う。

このブログは、もともとオリンピックに向けて日本の良さを学んでいこう、というコンセプトで始めたものだけど、学んでほしい相手もさまざまだし。当然、海外から来られる方も多いはずだし。

この本を読み終わったいま、来たる2020年のオリンピック、パラリンピックイヤーをどんなマインドで迎えるのか、ということを真剣に考えたいと思った。 ようやく自分事になったのかもしれない。

相手の国のこと、文化のこと、信念や価値観など背景を理解して、日本の特徴や良さもしっかりと発信して、初めて認め合うことが出来るはず。

今までは、素晴らしい日本を伝えたい!という気持ちが前のめってしまい、押し付けがましい感じになっていたなあと少し反省。

 

この本の主人公も言っていた。

「いろいろあって当たり前」こそが authentic(本物)。

自分に都合がいいところだけでコミュニケーションしようとせず、他人の靴を履いてみるマインドを持って、コミュニケーション出来る人になりたい

 

年末に、良い学びをいただけたー。ありがとうございました。

 

(おまけ情報)

なんとなんと、現在 4章分がマルッとWEB無料公開しているらしい。1冊読んだほうが絶対にいいけど、買う前のキッカケとして、眺めてみてもいいかも。 

 

本を読んだ上で、こちらの記事も読むとさらに復習となり良い。

globe.asahi.com

 

2020年まであと少し。

楽しみは、つづく☺︎