ブラタモリという偏愛
2017年も残すところ、あと半月。
今週末は、テレビのハードディスクに溜め込んだブラタモリをブルーレイへ移行するという作業に追われている。
2017年のブラタモリは、これまで全36回(12/16時点、12/23にラスト回放送予定)の放送があった。
こうしてタイトルを眺めてみると、当時の映像・タモリさんの言葉・見ていたときの気持ちが蘇ってくるなあ。
今年もたくさんの学びをいただき、ありがとうございました。
そんな感謝をしながら、ふと思う。
この素晴らしい番組の魅力、一体どれだけの人に伝わっているのだろう。まだ知らないが人がいるのならば、ぜひブラタモリの奥深さに気づいてほしい、と。
わたしなりに、何か貢献できることはないのかと模索をしながら、今回はブラタモリについて纏めてみようと思う。
知的好奇心をくすぐる「地」への探究
もし、ブラタモリを旅番組と思っているのなら、それは大きな間違いだ。
ブラタモリは、地質・地形・歴史の3つの切り口から、町の成り立ちと特性を明らかにしていく、壮大なる謎解き番組である。
タモリさん自身は、ブラタモリについて次のように説明している。
「地学・地質というマイナーな分野と、歴史を合わせて街をブラつく。出てくるのは、私と、ほどんど誰も知らない新人アナウンサー、テレビにほとんど出たことがない"土地のオヤジ"。この3人で、しかも土曜の夜7時半からやっているという、またしても無謀な行為」
www.excite.co.jp
この ”無謀な行為” が、わたしたちの知的好奇心をくすぐるのである。
なぜ山ができたのか、なぜ湖があるのか、なぜ城下町になったのか、なぜ温泉街になったのか。
そこには必ず、自然の営みと人間の知恵が潜んでいる。それらを解き明かすことの面白さを、この番組は教えてくれる。
ここからは、わたしの好きなタモリさんの言葉をピックアップし、その独特な視点と表現から、ブラタモリの魅力を紐解いていきたい。
- 「直線を見たら、断層と思え」
断層をこよなく愛するタモリさんが、断層を目の前に幾度となく語ってきた名言である。ブラタモリの基本の「き」と言っても過言ではない言葉だ。
自然界では、曲線が主体である。地形において ”不自然なる直線” があれば、それは断層である可能性が高い、ということ。
断層がつくる高低差を活用して、温泉が湧いたり、神社や寺や城が造られることがあるため、断層は、町の成り立ちを知るうえで重要なポイントとなるのだ。
ブラタモリでは、タモリさんや地元の専門家たちが、断層のような地質学の知識を丁寧にわかりやすく教えてくれる。
先日、その功績が讃えられ、日本地質学会からも表彰されている。タモリさんの「地」への愛が、学会の心をも動かしたのである。
- 「滝は、後退する」
この名言を聞くまで、滝の後退について考えたことすらなかった。
滝は、大地を削って流れているので、長い年月をかけて後退していくのだという。たしかに、言われてみれば納得だが、滝を目の前に後退に気づく人はほとんどいないだろう。
今年も立山の回で、称名滝(しょうみょうだき)の後退が話題となった。滝の後退スピードは、10年で1メートル。称名滝の場合は、7万年かけて7キロメートル移動していることになる。
「いま、通ってきた道もすべて滝がつくったもの」と説明するタモリさんの言葉に、驚きを隠せない。いまここにある滝は、いましか見られ無いものだと思うと、より感慨深くなる。
こちら過去記事ではあるが、華厳の滝の後退の話だったのでご紹介。専門家泣かせのタモリさんの知識深さも感じられる。
- 「扇状地は川の老後。お疲れさまでした」
地理の時間に習ったであろう、扇状地。
扇状地(せんじょうち、英語: alluvial fan)とは、河川が山地から平野や盆地に移る所などに見られる、土砂などが山側を頂点として扇状に堆積した地形のこと。扇状地 - Wikipedia
学生のころは興味すらなかった扇状地であったが、タモリさんの名言を聞いたら、急に哀愁を感じてしまう。
かつての雨が川となり、大地を削りながら上流から流れ落ちてきて、ようやくその役目を終えようとして辿り着いたのが、扇状地。
不思議と、川に対して「長旅、お疲れさまでした」の深い感謝の気持ちが湧いてくる。
当たり前の風景も、感情を抱いて見つめると、まったく違うものに見えるのだなあと気づかされるのだ。
- 「1万年前?それ、最近ですね」
地球ができて46億年なので、1万年前というのは、地質学的には ”最近” という話。一見わかりづらい感覚なのだが、タモリさんは次のような例えで解説してくれる。
「自分が46億円持っていたとしたら、1000円や1万円なんて、はした金でしょう?」
おお、たしかに!(笑)
46億円持ってるなら、1万円だって気にせず人にあげてもいいレベル。
そう思うと、1000年前(平安時代)におきた噴火の話を聞いても「それは、新しい噴火ですね(46億年の歴史のなかでは、1000年前なんて最近の話!)」と思えてくる。
地球レベルでとらえると、物事の見方って変わるのだ。
偏愛こそが、最大の魅力
今回ご紹介した、タモリさんの名言たち。
改めて眺めると、どれも地学に対するタモリさんの愛情を感じられるものばかりだ。
ブラタモリの最大の魅力、それは、タモリさん本人が、地形、地質、歴史が大好きで大好きで仕方ないということ。これに尽きる。
小難しい地学の知識を紹介される番組ならば、ここまでの魅力は感じないはず。
タモリさんが自らの足で探索しながら、自らの知的好奇心を満たしていくその姿に、わたしたちは惹きつけられてしまうではないだろうか。
つまりは、マニアックな分野「地学」に対する偏愛。
これをピュアに実現するタモリさんの生き方自体に、心揺さぶられ、一緒にワクワクし、「地学」の面白さに気づかされていく。
それが、ブラタモリである。
以上つらつら書いてしまったが、要約するとこの一言に尽きる。
ブラタモリは、あなたが思っている以上に面白いから、来年は絶対見続けたほうがいいよ!
楽しみはつづく☺︎