ブラレイコ

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京博「国宝」レポート②〜心に残った5つの国宝

子供の頃に教科書で見た「国の宝たち」を生で観ることができる国宝展。

実物を前にしたときに湧き上がる感情は、二次元では味わえない特別なもの。
鑑賞しながら、その圧倒さに言葉を失い、圧倒的な”何か”を消化できずに胸が詰まり、壮大なストーリーを知り感極まる。

前回記事では、国宝展に行くまでの様子をご紹介したので、今回は特に心に残った5つの国宝についてレポート。作品を観て感じたことを改めて振り返ることで、そのとき自分のなかに残った”何か”を、少しでも言語化できますように。

 


日本書紀 巻第二十二(岩崎本)


日本書紀 巻第二十二 巻第二十四 - e国宝 

日本書紀の古写本(こしゃほん)。日本最古の歴史書 日本書紀平安時代に書き写したもので、現存するなかで2番目に古いと言われている。
文字の一つ一つが、いま でもはっきりと読める。綴られた文字は美しく、しなやか。平安時代のものであることが、信じられないほどの状態の良さ。描かれている訓読点は、時代時代に書き足されたものらしい。平安時代からいまに至るまで、多くの人がこの書を読み、古の日本に想いを馳せたにちがいない。

この巻第二十二というのは、推古天皇紀が書かれているもの。その場で見ても正直読み取れる限界があったので、改めて要約文を調べてみた。
冠位十二階、十七条の憲法など、日本史の教科書で習ったキーワードが、ここに綴られていたことがわかる。

nihonsinwa.com

この書籍が「岩崎本」と呼ばれているのは、かつて岩崎家(旧三菱財団本家)が所蔵していたことが由来している。
代々受け継がれ守られ、いまここにあるのだと思うと…とても感慨深い。

②金銅藤原道長 経筒(きょうづつ) 

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▲1007年8月11日に藤原道長が金峯山(きんぷせん)に登って埋めた経筒。経筒とは、お経を書き写したものを入れて埋める筒のこと。
金峯山でお経を埋める様子は御堂関白記(みどうかんぱくき)という道長の日記にも記されていて、ほぼ正確に知ることができるらしい。今から1100年前の話なのに…驚き。

金峯山は標高1700メートルを超える険しい山らしい。その頂上に登ることは当時大変なことだったに違いない。なぜ、道長はそこまでして登らなければならなかったのか?
———それは、未来へかけた願いがあったから。
経筒には、五百字余りの法華経阿弥陀経、弥勒経などに込めた願いが詳しく説明されている。これから訪れる末法(仏教が廃れ乱れる時代)の後、56 億7000万年先の未来に現れる弥勒如来(みろくにょらい)の再来を託した想いが詰まってる。当時の道長の想いと、深い信仰心…。

この筒に詰まっていたのは、千百年の時を超えた道長の真っ直ぐな想いだった。この壮大なストーリーを前に、ただただ立ち尽くす。

 

③桜図壁貼付 長谷川久蔵筆  ④松林図屏風 長谷川等伯

この作品は、2つ同時に紹介しなければならない。
長谷川等伯は、桃山〜江戸初期に活躍した絵師。当時人気を誇った狩野永徳率いる狩野派を脅かす存在だった。そんな等伯の息子が、久蔵。 この2つの絵には、親子の切ないストーリーが隠されている。 

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▲息子 久蔵が24歳のときに描いた桜図壁貼付(さくらずかべはりづけ) 。この絵は、秀吉の長男の鶴松が3歳で亡くなり、その菩提寺として建てられた智積院(ちしゃくいん)のために描いたもの。
パッと目にした途端、この世界観に吸い込まれると言うか…現実を忘れて、この生命力みなぎる桜の木に心が奪われる。まるで別世界への入り口のよう。桜の花びらは、3Dのように浮きあがって見え、ふんわりと咲き開く桜の華やかさを感じる。

これから絵師として順風な人生を送ると思われた久蔵だが、なんとこの桜図壁貼付を描いた直後に急死してしまう。わずか26歳の短い人生だった。

等伯は、息子を失い悲しみ暮れる。失意のなかで描ききった作品が、この松林図屏風(しょうりんずびょうぶ)だ。

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▲秀吉から依頼を受け、祥雲寺(しょううんじ)の障壁画として描いた作品。靄(もや)のなかに見え隠れする松林を、墨の濃淡・筆のタッチの使い分け・空間を大胆に残す構図などを用いて見事に描いている。詩情豊かな表現に、「わびの境地」とも言われる作品。
画像の詳細は、ぜひこちらを参照ください。

手前の幹は、力強く大胆に、迷いなく勢いのある表現で描かれている。靄の奥には、薄っすらとした柔らかいタッチで描かれた松。それぞれの木々の間には、大きな空間。見ていて、美しさと儚さの両方を感じる不思議な作品。

息子を失ったばかりの等伯は、この絵にどのような想いを込めたのだろう…。

参考:開館120周年記念 特別展覧会 国宝 | 京都国立博物館 | Kyoto National Museum

 

⑤婚礼調度類 (徳川光友夫人 千代姫所用)

三代将軍徳川家光の長女千代姫が、2歳6か月の年齢で尾張徳川家二代藩主である光友に嫁いだ際に携えた婚礼調度類(こんれいちょうどるい)の一部。

婚礼調度類〈(徳川光友夫人千代姫所用)/〉 文化遺産オンライン

▲写真は一式であるが、実際の展示は一部のみ。今回は、貝桶・鏡台・十種香箱を観ることができた。

婚礼調度類は、まさに安土桃山文化の集大成。その豪華さに目を奪われる。
貝桶と鏡台は初音の調度と言われており、『源氏物語』の「初音」の帖に因んだ作品。一つ一つの絵柄には、お祝いの意味とその物語が描かれており見ていて飽きない。特に、貝桶はとても重要な意味を持っており、婚礼行列の一番先頭を飾るらしい。

この豪華さは本当に素晴らしいのだけれど、やはりどこか引っかかるのは、嫁入りが2歳6カ月ということ。当時は、生まれたときに嫁ぎ先が決まり、すぐに婚礼調度類をつくりだし、完成したら嫁いでいく…という段取りなのだそう。時代的にそう言うものなんだろうけど、改めて聞くとやっぱり驚く。

政略結婚をした千代姫が成長したときに、どのような気持ちでこれらの婚礼調度類を見ていたのだろう。この華やかさが彼女の目にどう映ったのだろう。と、ついつい考えてしまう。

⑥おまけ:国宝で購入したお土産たち

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「千寿せんべい」は、風神雷神のパッケージに一目惚れして即買い。会社へのお土産に!と思い購入するも、おせんべい数5枚だったので数的には全然足りずに微妙な感じになってしまった。(味が美味しいのは間違いない◎)

また、今後のお勉強用に「日本絵画の見かた」を購入 。イラスト多めで分かりやすくポイント紹介がされているので有り難い。これから美術館へ行くときの良い相棒になりそう!

 

京都国立博物館「国宝」を観て

まず、今回ご紹介した内容については、素人の知識と解釈ということで何卒多めに見てください m(_  _)m

改めて思うのは、時代背景・作り手の想い・作品にまつわる人間事情を知りながら(時には妄想しながら)作品を見ると、自分の心に様々な感情が沸き起こってくるということ。美術品を感じることは、思いもよらない自分の感情を知るということなのかもしれません。(深い…とても深いです…)

折角いまの時代に生まれたのだから、残されている素晴らしい美術品の数々をもっともっと知っていきたい、と強く思いました。

そして、同時に感じるのは、数々の日本の宝をたいせつに保管してくださった歴代の方々への深い感謝。時代が移り変わっても、常に誰かが守って残してくださったから、いま作品を観ることができる訳で。そう思うと、本当に本当に有難い限り。
ありがとうございます。

 

はぁ…兎にも角にもいい時間だったな、国宝展!
これを機に、美術品のお勉強に励みます。

 

楽しみはつづく☺︎