ブラレイコ

ブラっと訪れた人生の寄り道からの学びを、ゆるふわに綴る場所

睦月に想う、季節と言葉とネイル

旧暦の睦月も、もう終わり。

睦月の「睦」は、『親しくて仲がよい。むつまじい。親しくする。むつぶ。』を意味している。
一年のはじまりの月に、人との繋がりを連想させる「睦」が使われているのは嬉しい。

季節の移ろいのなかで出逢う言葉がある。
中でも、春の言葉は特別だ。

かつて旧暦で過ごしていた時代、一年のはじまりは春と共にあった。
そんな始まりの「春」。その語源は古く、自然の姿から生まれた ”やまとことば” だという。

天気の「晴る」、草木の芽が「張る」、万物が「発つる」、田畑の「墾る」、目を「見張る」などに関係し、広々として見通しが明るくなること、万物が清明な様子をいう。「はる」に「ふ」をつけると「はらふ」。
「和暦 日日是好日」より

 

今回は、春のはじまりに出逢った、お気に入りの言葉たちを記録する。

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超クリエイティブ空間「文楽」を観る

前回までの予習「超クリエイティブ空間「文楽」を知る - ブラレイコ」を経て。

いよいよ、観劇へ。
文楽デビューとなる今回は、友人が手配をしてくれたこちらの演目を観にいくことになった。 
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女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)」

すごいタイトル……!笑
近松門左衛門の晩年の作品で、江戸時代に実際に起きた事件を参考にして作られたと言う説もあるらしい。

現在では、歌舞伎や映画、ドラマなどにもリメイクされている有名作品と聞き、ワクワクしながら、国立劇場へと向かう。

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超クリエイティブ空間「文楽」を知る

文楽(ぶんらく)と出会った。

事前にサイトや本を読み、イメージを膨らませて行ったつもりが、実際の空間は想像をはるかに超えて素晴らしいものだった。

その驚きと、素人ながらに感じた素晴らしさをご紹介したい。

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祖母、天国へと旅立つ

それは、2月3日の節分の日だった。

暦のうえでは、冬の終わりを意味する日。
翌日の立春から新しい春が始まる、ちょうど節目の日。

そんな日を、祖母は最期の日に ”選んだ” に違いない。
国語教師で、歌人で、暦に詳しい、祖母らしい最期の日に。

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着物ライフに憧れて

着物を着こなせる人になりたいなぁ〜。


と、思い続けて何年が経つだろう。

いまのわたしの生活には、全く着物と触れ合う機会がないので。憧れはあっても、日常に取り入れるというのが結構難しい。

ただただ思い続けても、着物との距離は一向に縮まず…… 。
このままじゃあ、憧れだけで人生が終わってしまう。

そんな焦りから、2018年こそは着物ライフにチャレンジする!と決めました。


今回は、思い立ってから今日に至るまでの約1ヶ月のわたしの行動をログ化。

これから長〜く続いていくであろう、 ”着物チャレンジ” でくじけそうになったとき、
このブログが励ましてくれる、と期待を込めて。

 

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言葉に纏わるプロダクトの魅力

しばらくぶりの更新。

今回は、ここ数年注目している、日本の言葉に纏わるプロダクトについて書き留めておきたい。

 

言葉の持つ力を考える

万葉集には、つぎのような歌がある。

しきしまの 大倭(やまと)の国は 言霊の助くる国ぞ まさきくあれ  (万葉集 柿本人麻呂より)

「この日本の国は 言霊の助ける国なのだ。だから無事であっておくれ。」といった意味。(海路の旅に出る人へ餞(はなむけ)した歌)

「言葉には力がある」と信じているからこそ、「無事であっておくれ」とあえて口に発することで幸いが起こることを期待する、そんな想いが表れている歌。

当時も、ポジティブな言葉がもたらす力を感じていたのだろう。

 

そう言えば、ポジティブな言葉の力に関して、心に残っている一節がある。

わたしは「できない」「無理」などのネガティブな言葉は発しない。なぜなら、言葉を発したら、自分の耳を通って、自分自身に返ってくるからだ。

ネガティブなことばかり考えて、発信していくと、自分自身がネガティブに染まっていってしまう。だから、ポジティブに物事を捉えて、言葉にする。

10年ほど前に、孫 正義 氏が、新卒入社社員へ贈った言葉。

「孫さんレベルでも、言葉のチョイスを気にするんだなあ〜」と驚いたし、「自分の発する言葉を最初に聞くのは自分」というフレーズがとても印象的で。いまなお覚えているし、わたし自身も意識するようになった一節だ。

いわゆるポジティブシンキングの話なのかもしれないが、それを実践する最初の一歩は、自分が発する前向きな言葉なのかもしれない。

 

きっと、わたしたちは「言葉の持つ力」をどこかで感じていて、信じている。
だからこそ、わたしは、日常のなかで「言葉」とどのように関わっていくのかを意識したいのだ。

 

 

心に留めておきたい言葉を身にまとう

1年前、素敵なコンセプトのアクセサリーと出逢った。

デザイナー國廣 沙織さんが手掛ける、ひらがなをモチーフにしたアクセサリーだ。

www.saorikunihiro.com

ひらがなは、万葉の時代から受け継がれている日本特有の文字文化。

ひらがなの曲線は、独創的で美しく、書のデザインだけでも十分にアートなのに。それが、アクセサリーと化して身につけられ、しかも好きな言葉をセレクトできるという……!

この魅力は、大きく2点だ。

まず、根底に書家としての日本文化への敬意と伝承、言葉の持つ意味の理解がしっかりとあるという点。
これだけだと少し小難しい印象となるのだが、アクセサリーという形にすることで、うまく日常と接続され身近に感じられるという点。

この2点が組み合わされた発想とバランスが、たまらなく良い!

 

すっかり國廣さんのファンとなり、ひらがなアクセサリーをほぼ毎日身につけて、言葉の意味を心に刻みながら生活をしている。

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▲「こころ」ネックレスと「ありがとう」ピアス。ネックレスは、文字のデザイン性も素敵。「心に正直に毎日在りたい」という自分への想いを込めてつけてる。

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ピアスは、誰かにありがとうを伝えたい想いが強い日に、身につけるようにしている。

パッと見ただけでは、ひらがなかどうか分からないことも多く、「これは何の形?」「これって文字?」と質問されることも多々。アクセサリーのコンセプトを含めて紹介すると、皆さんからお褒めの言葉をいただくことが多い。

 

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あいしてる指輪中K10 - Hiragana

▲こちらは「あいしてる」指輪。
自分では買いたくないけど、欲しいもの。笑


アクセサリーは、オーダーもできるため、自分自身やたいせつな人の名前で作るのも素敵だなあと思う。

2月前半には、歌舞伎座の地下での催事販売があるとのこと。また、新しい言葉のアクセサリーを手に入れるべく、國廣さんに会いに行こうと決めている。

 

 

たいせつな人に伝えたい言葉の想い

たいせつな人の人生の節目に、どのような言葉を添えようか。たいせつ故に、想いが溢れ、言葉に詰まってしまうこともある。

昨年、親しい後輩が結婚をすることになった。台湾出身で、就職と同時に日本に来た彼女だが、日本人男性と結婚することになった。

頑張り屋さんで、優しくて、繊細な心を持つ彼女に、どのような言葉を贈ろうかと考えていたところ、この言葉に出逢った。

 

「恵風(けいふう)」

万物を成長させる恵みの風。
生きとし生けるものを育んでいく力強い風です。
大切な方のよき未来をお祈りして。

まさに、わたしが彼女に伝えたい想いがギュッと詰まっているような言葉。

この言葉をわたしに教えてくれたのは、SIONEが手掛ける「読む器」シリーズだった。

store.si-o-ne.jp

しかも、単純なプロダクトではなく、たいそう凝っているのだ。

BOOK型のパッケージを開くと、左ページにはモノガタリが、右ページにはモノガタリが宿ったうつわがセットされています。
また、それぞれのモノガタリに合わせた音楽が付いておりQRコードよりアクセスし、お聞き頂く楽しみも一緒になった商品です。

言葉から成るモノガタリと、それをイメージして創られた器と、更に音楽とがひとつになったプロダクト。

贈り主の気持ちを、目で手で耳で感じることができるなんて、とっても面白いこと試みである。

今回セレクトした「恵風」以外にも、「亀甲」「蓮根」「しなとの風」など素敵な言葉をテーマとした器がたくさん!

たいせつな人への言葉の贈り方として、ぜひチェックしておきたい。

 

 

言葉に纏わるプロダクトに心奪われて

自分自身にも、たいせつな人に対しても、湧き上がる感情があり、それを表現するためには言葉が必要不可欠である。

スピーチ、手紙、メール、LINEなど、伝える方法はたくさんあるのだろうけれど、それを「形」として残すというやり方が、どうやらわたしは好きらしい。

なぜなら、前向きな言葉を身につけたり、日頃から触れていることが、きっと幸いをもたらすのだと、信じているから。

今回紹介したネックレスも器も、そんな「言葉の力」への想いを叶えてくれる素敵な存在たちなのだ。 

 

今年も、たいせつな人たちにたくさんの幸が訪れるよう、たくさんの幸ある言葉をのせたプロダクトを贈りたいと思う。

 

楽しみはつづく☺︎

北斎とジャポニスムと、馬渕館長

本日は、上野の国立西洋美術館で開催中の「北斎ジャポニスム」を鑑賞。

hokusai-japonisme.jp

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▲この特別展のテーマカラーは桃色と紺色。上品なコンストラストがとっても素敵!

 

なぜ、北斎ジャポニスム

そもそも、ジャポニスムとは何か。

新しい美術表現を模索していた西洋の美術家が、日本の表現の方法を取り入れ、自分たちの芸術を発展させたのが、ジャポニスムなのです。

北斎とジャポニスムより

19世紀中頃、西洋美術がこれまでの長い伝統から抜け出し、近代美術として自立するきっかけのひとつが、ジャポニスムと言われている。 


今回の特別展の最大の魅力は、北斎の絵に影響を受けた西洋画と、影響を与えた北斎の絵を並べて鑑賞ができるところにある。


例えば、こんな感じだ。

エドガー・ドガ 《踊り子たち、ピンクと緑》  葛飾北斎 『北斎漫画』十一編(部分)
エドガー・ドガ「踊り子たち、ピンクと緑」/ 葛飾北斎北斎漫画 十一編」

 

ジョルジュ・スーラ 《とがったオック岬、グランカン》  葛飾北斎 《おしをくりはとうつうせんのづ》

ジョルジュ・スーラ「とがったオック岬、グランカン」 / 葛飾北斎「おしをくりはとうつうせんのづ」

みどころ | 北斎とジャポニスムより引用

 

「偶然一致してるんじゃないの?」と思うかもしれないが、それは違う。

専門家から見ても、ジャポニスムの前と後では、西洋美術の構図・表現技法に大きな変化がもたらされたことは明らかであり、なかでも特に影響を与えたと言われるのが、葛飾北斎なのだ。

 

 

画狂人、葛飾北斎の素顔

画狂人(がきょうじん)とは、本人が名乗っていた名前のひとつ。その名の通り、北斎には個性的なエピソードが山のように残っている。

・89歳で亡くなるまで、生涯現役として70年間絵を描き続けた

・版画、浮世絵、風景画、挿絵など、幅広いジャンルで才能を開花

・名前を改号すること30回、北斎という名前すら弟子に譲っている

・引っ越し歴90回以上、絵に集中するあまり掃除をせず、汚くなったら引っ越すことを繰り返す

・弟子のための手本書「北斎漫画 全十五編」を制作、のちにフランス人画家たちの目にとまりジャポニスムの引き金となる

この北斎漫画は、いわゆるスケッチ画集のようなもので、日常生活の風景・人間・動物・草木・妖怪などが、4000点ほど描かれている。

www.ukiyoe-ota-muse.jp

タッチはシンプル、無駄な線はない。ごまかしがない。
本質を捉え、瞬間を描いているような…… ずっと見ていたい素晴らしい作品だ。 

 

 

馬渕館長の光る存在感

国立西洋美術館馬渕明子館長が、「北斎ジャポニスム」に関する解説動画を公開している。
その中の一節が印象的だったので、ぜひ紹介したい。

ジャポニスムの話をすると、西洋の芸術家に影響を与えた日本美術を誇りに思う、という人がいますが、それはちょっと違うのではないかと思います。

西洋の人たちは、日本の芸術に影響を受けながらも自分たちなりの新しい作品を生み出してきた。それをやり遂げた西洋人たちの吸収発展能力はすごい。

日本人は、明治以降、北斎を大切にしてきたのか?北斎を引き継ぎ発展させたか?と言いたい。日本人には、北斎をもっとたいせつにしなかった自分たちを反省してもらいたいと私は思います(笑)

 

馬渕館長、キレ味最高〜!

つまり「北斎ってすごい」「日本美術ってすごい」という結論は、少し浅はかということ。そもそも、美術鑑賞というのはどっちが優れているとかを評価するものでもなく、自分の感性で感じられれば良いものだし。

 

この特別展は、「異文化を受け入れ新しいものを生み出す素晴らしさ」をわたしたちに教えてくれているのかもしれない。

ジャポニスムというテーマ故に、今回はあくまでも西洋美術が主役だが、北斎も西洋美術の影響は受けている。

かの有名な「富嶽三十六景」は、西洋画の遠近法を取り入れつつ、北斎流のデフォルメや平面化を施すことで、新しい自然風景のデザインを生み出しているのだ。

そして、その大胆なデザインを見て、今度は西洋の画家たちが影響を受けて、新しいものを生み出していく。

相互に影響しあって、相互に技術発展しているのだ。

 

「異文化を受け入れ新しいものを生み出す素晴らしさ」とは、いまの日本企業に求められるイノベーション創出そのものかもしれない。


今回の特別展、じつに深い。素晴らしいテーマだ。
これを企画し伝道されている馬渕館長って、本当に素敵。すっかりファンになりました。

ぜひ、多くの方に、館長の解説動画 もっと楽しむQ&A | 北斎とジャポニスム をご覧いただきたい。

 

ちなみに、館長の肩書きも大変ユニークであり、人としての広さと深みを感じずにはいられない。(とくに赤字部分……! )

馬渕 明子(まぶち・あきこ) 1972年東京大学教養学部フランス科卒業。78年同大学院人文科学研究科美術史博士課程満期退学。独立行政法人国立美術館理事長、国立西洋美術館館長、美術史家、文化審議会委員。2014年3月、日本サッカー協会副会長に就任。2015年4月、日本女子サッカーリーグ理事長。

 

兎にも角にも、
今日は、作品の裏にある芸術家たちの果てない向上心と、それを伝える素晴らしい館長に出会えたことに感謝である。

 

上野に来て、良かった〜!

 

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▲最後に1枚。入り口にある北斎の代表作「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)、通称グレートウェーブ」のモチーフ。

この無駄のないダイナミックさ、たまりません。

 

 

楽しみはつづく☺︎